MESSAGE FROM THE SEA

海の生物たちの
終わりのない宴 #6

PICTURE & WORD
2022年5月31日
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イルカのように素直に生きていこう

海をボートで走っていると、ときどきイルカたちが集まってきて舳先に付いて泳ぎ出すことがある。ボートが進む時に水を前に押し出す力が働くので、イルカたちは水中で、水に押されながら楽しく泳ぐことができるのだ。

それからかれらは、走るボートが作り出す引き波に乗って遊ぶのも大好きだ。盛り上がる引き波で弾みを付けてジャンプしたり、引き波の斜面を滑り降りるように水を切って遊んだり…。いつも暮らす海で、かれらはいろんな楽しみを見つけて嬉しそうに生きている。

動物たちの中には好奇心と警戒心とが常に同居していて、それぞれの大きさの占める割合は動物の種類によっても状況によっても大きく変わってくる。イルカたちにももちろん警戒心が強いものもいるし、気分が乗らない時もある。しかしそんな個体たちも、次の瞬間には嬉々としてジャンプし、仲間とじゃれ合っていたりする。

僕ら人間の世界では、仕事だからとか、非常識だとか、いろんな制約があってなかなか気持ちに素直に生きるのは難しい。でも大海原で出合うイルカたちを見ていると、「これでいいんだ!」と、まるで盛り上がる波が背中を押してくれるように、すんなりと思えてくる。長い間いろんな生き物を見てきたけれど、やはりイルカたちは生きることの大先生だと思う。

写真◎ブレイクする波に乗ったあと、波の裏側に出て息継ぎするイルカたち。

写真・文◎高砂淳二(たかさご・じゅんじ) 。自然写真家。1962年宮城県石巻市生まれ。海中から生き物、虹、風景、星空まで、地球全体をフィールドに撮影活動を続けている。最新刊の「Aloha~美しきハワイをめぐる旅~」をはじめ、「Planet of Water」、「night rainbow」、「Dear Earth」,「光と虹と神話」、「夜の虹の向こうへ」ほか著書多数。地球のこと、自然と人との関わり合いなどを、メディアで幅広く伝え続けている。