海の生物たちの
終わりのない宴 #5
海底を作る動物 「サンゴ」
色とりどりの魚たちとともに南の海を彩るサンゴ。カラフルな石か植物のようにも見えるサンゴだが、実はれっきとした動物だ。大雑把にいえば、クラゲのような生き物を数ミリほどに小さくして逆さまにし、テーブル型や木枝型のマンションに並んだ粒々の各小部屋に住まわせたようなもの、と言ったら分かりやすいだろうか。テーブル状などのものはサンゴの群体となる。
この小さな小さなサンゴは、地球の形成にも深くかかわり続けているとても貴重な動物でもある。サンゴが並んで棲んでいる粒々の小さなマンションは、それぞれのサンゴが協力し合って作った骨格だ。この骨格が何千年何万年と折り重なって、“サンゴ礁”という海中の土台を作り上げていく。実はこの土台が太平洋のプレートに乗って太古の昔日本列島にやってきたものが、現在セメントなどの原料として使われている石灰岩なのだ。
ハワイが毎年何センチかずつ日本に近づいているという話を聞いたことがあるかもしれない。火山活動でハワイのような島々が出来上がり、その周りにサンゴ礁が積み重なっていった。それが太平洋プレートに乗って移動し日本近海の海溝に沈み込む時に、表面に付いたサンゴ礁が剥ぎ取られ、日本列島の一部になっていった、というわけだ。
地球の歴史とともに二酸化炭素を吸収し土台を作り続けてきたサンゴの多くが、このまま行くとあと数十年で絶滅してしまうかもしれないという。何とか避けたい歴史である。
写真◎リュウキュウキッカサンゴ(沖縄・西表島)、2021年
写真・文◎高砂淳二(たかさご・じゅんじ) 。自然写真家。1962年宮城県石巻市生まれ。海中から生き物、虹、風景、星空まで、地球全体をフィールドに撮影活動を続けている。最新刊の「Aloha~美しきハワイをめぐる旅~」をはじめ、「Planet of Water」、「night rainbow」、「Dear Earth」,「光と虹と神話」、「夜の虹の向こうへ」ほか著書多数。地球のこと、自然と人との関わり合いなどを、メディアで幅広く伝え続けている。