MESSAGE FROM THE SEA

海の生物たちの
終わりのない宴 #4

PICTURE & WORD
2022年3月22日
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新月の海中に漂うエイリアン

月夜の海中は思ったよりも明るく、浅いところならライトを消してでも普通に泳ぎ回れるほどだ。しかし新月の海中は真っ暗で、まるで黒インクの海を漂っている感じ。そんな新月の真っ暗な夜にパラオの海に潜った。ガイドさんによると、新月の夜の方が、いろんな珍しい深海生物がリーフ近くの浅瀬に上ってきているとのこと。外洋を漂う小さな生物たちは、明るい夜に餌を求めてリーフに近づくと、逆に外敵に見つけられ捕食されてしまうため避けるらしいのだ。

真っ暗な海の中で、“タルマワシ”という不思議な生物に出合った。海中を漂うサルパと呼ばれるホヤの仲間を捕まえて中身を食べてしまい、残った樽型の外壁を棲み家にして漂って暮らす不思議な生態をもつ甲殻類だ。かれらは外洋で、深海と表層を行ったり来たりしているといわれ、この時も海が暗いので安心してリーフ近くの浅瀬まで来ていたのかもしれない。

実はこの生き物、映画「エイリアン」に出てくる怖い地球外生命体のモデルになったもの。サルパの体を乗っ取って生きる彼らの生き方はまるでエイリアンそのものだ。重力の影響を受けずに暗い海中を漂って暮らす生き物たちは、宇宙空間に存在する地球外生命体のイメージにぴったりなのかもしれない。

写真◎オオタルマワシ(パラオ)、2017年

写真・文◎高砂淳二(たかさご・じゅんじ) 。自然写真家。1962年宮城県石巻市生まれ。海中から生き物、虹、風景、星空まで、地球全体をフィールドに撮影活動を続けている。最新刊の「Aloha~美しきハワイをめぐる旅~」をはじめ、「Planet of Water」、「night rainbow」、「Dear Earth」,「光と虹と神話」、「夜の虹の向こうへ」ほか著書多数。地球のこと、自然と人との関わり合いなどを、メディアで幅広く伝え続けている。