MESSAGE FROM THE SEA

海の生物たちの
終わりのない宴 #3

PICTURE & WORD
2022年2月28日
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群泳は小さな魚たちの巧みな自助・共助システム

群れを成す魚をじっくり観察していると、魚の二つの行動に気づく。一つは、どの魚もいつも誰かの後に付いていようとしていること。群れが時として渦になるのは、全員が誰かの後を追おうとした結果である。

2つ目は、外敵がやってくるとみんな群れの内側に潜り込もうとすること。内側に行くことで安心でき、みんながそれを試みることで結果的に群れの密度が濃くなり目まぐるしく動く塊になっていく。

群れることで外敵が混乱したりして狙われる確率が減るのだとか、塊になることで大きな生物に見せかけ攻撃されないようにしているとかいう話は知られている。しかしそれだけではない。群れている魚は、周りの魚の水流を利用して効率的に泳いでいること、単独の魚と比べるとストレスによるエネルギー消費が少なく済むこと、などで、スタミナを温存しているということも分かっている。つまり、誰かの後を追うことや群れの中にいることで、ただ自分が食べられないというだけでなく、成長や繁殖のエネルギーをしっかり確保しようとしているらしいということだ。

とはいえ、群れる小魚たちはより大きな生物の栄養源。頑張って群れて子孫をたくさん残し、結果的に次世代の大型魚に餌を供給してあげるのも、もう一つの大事な役目である。

写真◎ガラパゴスイサキ(ガラパゴス)、1998年

写真・文◎高砂淳二(たかさご・じゅんじ) 自然写真家。1962年宮城県石巻市生まれ。海中から生き物、虹、風景、星空まで、地球全体をフィールドに撮影活動を続けている。「Planet of Water」、「night rainbow」、「Dear Earth」、「光と虹と神話」、「夜の虹の向こうへ」ほか著書多数。地球のこと、自然と人との関わり合いなどを、メディアで幅広く伝え続けている。ハワイの写真集「Aloha」~美しきハワイをめぐる旅~(パイインターナショナル)を、2月に刊行予定。