海の生物たちの
終わりのない宴 #1
南半球の冬、サーディンランを追いかけて
毎年南半球の冬が始まる5月になると、南極海からアフリカ東海岸に沿って、10億匹とも言われるイワシの巨塊が北上する“サーディンラン”と呼ばれる現象が始まる。そのイワシの大移動に合わせて、クジラやイルカ、サメ、オットセイ、海鳥などの無数の生き物が一堂に会し、年に一度の大ご馳走を巡るバトルが繰り広げられる。
イワシは暖かいアガラス海流を目指していると言われるが、それがどういう行動なのかはまだ分かっていない。ただ言えることは、サーディンランによって海の生き物たちが食料にありつくことができ、それによってこの海域の生態系が成り立っている、ということだ。
アフリカに限らず、海の中では、イワシたちはプランクトンに次いで生態系の底辺を支える大事な役目を担っている。無心に目の前の浮遊物を食べて栄養を蓄え、その体を食物連鎖の上にいる生き物に食べてもらうという役割だ。
東京湾に棲むカタクチイワシの8割からマイクロプラスチックが見つかったという。海の中にはすでに無限のマイクロプラスチックが漂い、僕らを含む生態系にしっかり入り込んでいるということになる。プラスチックが有害物質を吸着する性質をもつことから、人間の健康面への影響も心配されている。
「イワシの大移動を目当てに集まったザトウクジラたち」 コーヒーベイ沖/南アフリカ、2018年
写真・文◎高砂淳二(たかさご・じゅんじ)
自然写真家。1962年宮城県石巻市生まれ。海中から生き物、虹、風景、星空まで、地球全体をフィールドに撮影活動を続けている。「Planet of Water」、「night rainbow」、「Dear Earth」、「光と虹と神話」、「夜の虹の向こうへ」ほか著書多数。地球のこと、自然と人との関わり合いなどを、メディアで幅広く伝え続けている。