JAN 2022 / #007

CULTURE

東北の人も海も元気にしたい
松島湾の漁師、赤間俊介さんの挑戦

TOHOKU
2021年11月15日
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厄介者扱いされてきた海藻、アカモク

アカモクという海藻を知っているだろうか。
ワカメや昆布と同じ褐藻類に属し、北海道を除いて日本全国に生息する海藻だが、昔から積極的に食用として活用してきたのは一部地域のみ。海面を漂い漁船のスクリューや養殖いかだに絡むことから、漁師の間では「ジャマモク」「バツモ」などと呼ばれ厄介者扱いされてきた。

だが、近年アカモクは2つの側面から注目を集めている。1つは、ミネラルや食物繊維、ポリフェノールやフコイダンを豊富に含む美容・健康食材として。もう1つは、海中の窒素やリンを吸収し赤潮を防ぐ自然の浄化装置として。

東日本大震災後、東北では地域を横断してアカモクをPRする取り組みも行われた。仕掛け人の1人、「株式会社シーフーズあかま」<宮城県塩竈(しおがま)市>代表の赤間俊介さんは、資源管理をしながらアカモク漁と加工販売を行なっている。

震災後、アカモクを積極的に商品化

「終戦後に祖父が海藻の養殖を始め、平成元年に父がシーフーズあかまを設立しました。一次産業だけだと、色合いなどが規格外のもの、見た目の良くないものは市場で買い叩かれてしまう。そういったものを加工して付加価値をつけ、新しい販路を開拓しようとしたのです。自分たちが収穫した海藻だけではなく、ほかの漁師が収穫した海藻も買い付けて加工販売しています」

俊介さんは3代目漁師として中学生の頃からワカメの養殖を手伝い、23歳のときにシーフーズあかまに入社した。その4年後、27歳のときに東日本大震災が発生。赤間家はドライブ船1艘と小舟2艘、養殖施設を流され約1500万円の被害を受けたが、半年後には新造船し、漁を再開した。

震災後に力を入れて取り組んできたのは、アカモクの販売促進だ。もともとシーフーズあかまでは20年前からアカモクを扱ってきた。父の廣志さんがアカモクは秋田県ではギバサと呼ばれ親しまれていると知り、商品化に乗り出したのだ。当時の三陸ではアカモクを採る習慣はなく、ほかの漁師からは「邪魔だからどんどん採って」と言われたという。

俊介さんは2014年に競合であった岩手アカモク生産協同組合、被災地生産者の支援を行なっていた一般社団法人東の食の会とともに「地域横断アカモクプロジェクト」を開始。共同で商品開発やレシピ提案を行い、アカモクのブランディングに努めてきた。また、アカモクの加工の際に出る茹で汁を利用し、塩のまち・塩竈に伝わる古式製法を参考にした「藻塩」を製造。ナトリウムが精製塩より少なく、マグネシウムやカリウム、カルシウムといったミネラルと海藻成分を多く含む自然塩として人気を博している。

塩竈の御釜神社では、毎年行われる「藻塩焼神事」を通して海水とアカモクから塩をつくる技法が伝承されてきた。シーフーズあかまではこの藻塩を、海藻成分を多く含む塩として独自の技術で再現し、「しおがまの藻塩」という商品名で販売している。
塩竈の御釜神社では、毎年行われる「藻塩焼神事」を通して海水とアカモクから塩をつくる技法が伝承されてきた。シーフーズあかまではこの藻塩を、海藻成分を多く含む塩として独自の技術で再現し、「しおがまの藻塩」という商品名で販売している。

松島湾の海の生態系を維持していくために

アカモクの販売促進に取り組むなかで、俊介さんはアカモクに水質浄化作用があることを知ったという。

「近年の研究で、アカモクが海中の窒素やリンを吸収しプランクトンの増殖を抑制することが明らかになりました。また、藻場は直射日光を遮って水温上昇を防ぐし、魚の産卵場所や隠れ家にもなります」

海の生態系を維持する役割を担っているアカモク。一年藻なので浮き袋を付けて胞子を放出しながら海を漂い流されてしまうが、その前に適切な量を漁師が採ることで循環が生まれる。また、収穫の際に藻場を揺らすことで胞子の落下が促されるため、適度に間引きすることでより繁殖する、といった側面もある。しかし、2010年代中頃からアカモクが注目されはじめると、企業が参入し資源管理を考えずに採り尽くしてしまう事態に。ブームの翌年はアカモクがほとんど生えなかった地域もあったという。

「アカモクは生命力の強い海藻ですし、松島湾は潮の満ち引きでアカモクの胞子や幼体が流れてくるので、2年もあれば藻場は復活します。でも、きちんと資源管理をしなければ、いつか枯渇してしまうかもしれない。私たちが買い付ける漁師には、『未成熟のものは採らない』『上から3分の2だけ採る』といったルールを伝えています。前者は繁殖前のものを採ってしまうと全体の量が無くなってしまうから、後者は3分の1を残せばそこからまた生えてくるからです。ただ、アカモクを買い付けるのは私たちだけではありません。バイヤーが成熟していないアカモクも買い取ってしまうと、漁師は採ろうとしてしまう。未成熟なアカモクはおいしくないから、消費者にも『アカモクってこんなもんか』と思われてしまう。そういった悪循環に陥らないよう、採る人、加工する人、売る人、食べる人、みんなにアカモクに関する知識や海の生態系を守る意識を持ってもらいたいです」

「生業半分、自然半分」の考え方で

アカモクの買い取り価格はキロ当たり100円ほど。仮に漁業者が1日300キロ収穫したとすると、3万円の収入となる計算だ。追加の設備投資が必要ないため、ワカメ養殖やカキ養殖をしている漁師の良い副収入となっている。

「ワカメやカキも海中の窒素やリンを吸収して育っています。養殖場が無くなってしまったら、海が富栄養化して赤潮が起きてしまうかもしれない。漁を生業にする人がいることで、里海の循環システムは成り立っているんです。漁師の収入を増やして、担い手を育てていかなければ」

俊介さんが願うのは、三陸産のアカモクやシーフーズあかまだけが一人勝ちすることではなく、目利き力や資源管理のノウハウを持つアカモク漁師や加工会社が全国に増えること。そうすれば、一部地域に需要が集中して資源が枯渇するリスクは減るし、各地の海や漁業が持続可能になっていくだろう。アカモクの食文化が普及すれば、養殖をして積極的にアカモクの藻場を形成・維持する活動も増えるかもしれない。

「代々自然とともにやってきたので、これからも生業半分、自然半分で考えながら取り組んでいきたいと思います」

文◎飛田恵美子(ひだ・えみこ)
1984年茨城県生まれ。2012年から東日本大震災後に生まれた手仕事を取材しはじめ、サイト『東北マニュファクチュール・ストーリー』にて発信。2019年に『復興から自立へのものづくり』を小学館から出版。
http://www.cotohogu.com/

写真◎シーフーズあかま提供
https://www.sf-akama.com/