JWA REPORT

不要になったカーボン製マストをリサイクル#2――静岡大学の実験結果によって再確認された課題

INTELLIGENCE
2021年10月20日
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取り出された、不揃いの炭素繊維

ウインドサーフィンのボードやマスト、ブーム等に使われているのは、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)というリサイクルが困難なカーボン素材で、不要になったら廃棄するしかない。JWAとしては、環境汚染につながるこの問題に取り組む第一歩として、CFRPリサイクルの研究を推進する静岡大学に、あるウインドサーフィン・ギアメーカーの破損したマストの断片を提供し、そのCFRPからリサイクル素材となる炭素繊維を取り出す実験を行なってもらうことにした。

WATERMAN’S PRESS#002のJWA REPORTでは、静岡大学工学部 化学バイオ工学科の岡島いづみ准教授とJWAの石原智央理事長のインタビュー内容を掲載しているが、その中で岡島准教授は「一口にCFRPといっても様々な種類があり、性質も異なる。ウインドサーフィンのギアに使われているCFRPも同様で、製品として通用するリサイクル素材にすることは容易ではない」との見解を示していた。

この度、岡島准教授より、その実験内容が報告された。結果的には炭素繊維を取り出すことはできたものの、パリパリと折れやすいもの、折れることなく2つに曲げることのできるものなど、性質が均一ではなく、この結果をもとにウインドサーフィンのマストのリサイクルを議論できるまでには至らなかった。

岡島准教授によれば、「今回行った条件で回収された折れやすい繊維は、樹脂がすべて分解しきれずに表面部分に残留しているためではないかと……しかし、折れない繊維も回収できているので、樹脂残留率を減らす処理条件を検討することで、折れない繊維を安定回収することは可能かと考えられます」とのこと。

CFRPは、ウインドサーフィンに限らず、あらゆるスポーツの記録更新に欠かせないギア素材としてさらなる進化が期待されている。そうした中で、スポーツ界はCFRP開発においてどのように環境に配慮しながら研究開発を続けていくべきなのか。JWAとしては、今後も静岡大学をはじめ様々な研究機関、あるいは企業と連携し、微力ながらもCFRP問題と向き合い、その解決に寄与していきたい。

用意したもの。 ※左から切り出したマスト、水、反応管
用意したもの。 ※左から切り出したマスト、水、反応管
切り出したマストを反応管に入れる。
切り出したマストを反応管に入れる。
所定量の水を反応管に入れる。
所定量の水を反応管に入れる。
温度を上げた際に蒸気となった水が漏れないように、反応管の蓋を増し締め。
温度を上げた際に蒸気となった水が漏れないように、反応管の蓋を増し締め。
あらかじめ反応温度まで上げた溶融塩浴に反応管を入れる。
あらかじめ反応温度まで上げた溶融塩浴に反応管を入れる。
反応終了後、内容物を回収。
反応終了後、内容物を回収。
回収された繊維分。樹脂によって一部固い箇所があるものの、炭素繊維を取り出すことができた。
回収された繊維分。樹脂によって一部固い箇所があるものの、炭素繊維を取り出すことができた。