WATERMAN'S TALK

「ウインドサーフィンの魅力は、 道具のイノベーションとともに進化し続けること」

今月のウォーターマン
2021年7月25日
main image

PROFILE

  • 川添 雄彦

    KATSUHIKO KAWAZOE
    特定非営利活動法人 日本ウインドサーフィン協会(JWA) 会長
    日本電信電話株式会社 常務執行役員 研究企画部門長
    博士(情報学)

理系の私の想像力を駆り立てるスポーツ

WATERMAN’S TALK(今月のウォーターマン)は、毎号一人のWATERMANを紹介していく連載企画です。WATERMANの一般的な定義はありませんが、ここでは「海が大好きで、海に感謝の気持ちを持ち、海の窮状を目の当たりにして海のために何か行動を起こしている人物」とします。2回目に登場するのは、JWA特定非営利活動法人 日本ウインドサーフィン協会 会長の川添雄彦氏です。川添氏のウインドサーフィンの楽しみ方はちょっとユニークです。海の上でも常に理系脳をフル回転させて、ウインドサーフィンを通じて実現しうる未来を展望していらっしゃいます。

━━━ ウインドサーフインを始めたきっかけを教えてください。

私は早稲田大学理工学部の出身なんですが、当時、同じ研究室にウインドサーファーの友人がいて、彼に誘われて材木座で初めてウインドサーフィンをしました。4年生の時ですから1985年のこと、もう36年も前になりますね。

━━━ ウインドサーフィン初体験の感想はいかがでしたか?

もともと海が好きで、泳いだり、釣りをしたり、シュノーケリングをしたりと、海でよく遊んでいましたが、こんなにも海の上を自由に、好きなところに移動できるスポーツがあるのかと驚きましたし、とても楽しかったです。

━━━ ウインドサーフィン歴は35年以上になりますね。このスポーツのどのようなところに魅かれたのですか?

ウインドサーフィンの道具は、様々な技術が組み合わさっていますよね。それが理系の私にはとても魅力的で、やりはじめてすぐに道具の進化を想像してワクワクしました。もっと軽い素材、バワーを出すためにもっとマストにふさわしい素材はないだろうか……いつもそんなことばかり考えていたのですが、やはり道具はどんどん進化していき、このスポーツそのものも進化しました。ウインドサーフィンというのは、イノベーションとともに進化していくスポーツなんです。それが一番の魅力ですね。他のスポーツではそんなふうに気持ちは動かない。例えばサッカーだと道具はボールだけですし、野球も、バスケットボールも……。

━━━ 何か実現したいイノベーションのアイデアはありますか?

例えば「グリーンエネルギーを生み出すウインドサーフィン」。 セールの上に風力発電機が付いていて、それを走りながら回していくことで生まれるエネルギーを、マストの中に収めた電池に貯めていく……ウインドサーフィンをしながら、自分が今週使う電気は自分でつくることもできるわけです。スクリューを付けてもいい。風上へは貯まったエネルギーを使ってスクリューを回して進み、風下では自然の風がスクリューを回し、さらにエネルギーが貯まっていく。一例ですが、こんなふうにウインドサーフィンと社会のつながりを考えながらイノベーションを具現化できるといいですね。

委員会を立ち上げ、ウインドサーフィンの進化の方向性を語り合いたい

━━━ イノベーションは、ウインドサーフインの愛好家を増やすことにも役立ちそうですね。

今まで、JWAはレースをどのように運営するかに努めてきましたが、それでは一般の人々の関心を集められなかった。では、どうしたら一般のウインドサーファーがJWAの会員になってくれるのか、どうしたら新たなウインドサーフィン愛好家をつくることができるのか。私はその課題のために「イノベーション&SDGs委員会」といった組織を立ち上げてはどうかと考えています。

━━━ やはり「イノベーション」が重要なのですね。

そうです。でも難しく考える必要はない。この委員会にはウインドサーフィンの経験の有無を問わず、様々な属性の皆さんに入ってきてほしいんです。そして、ウインドサーフインはイノベーションとともに進化するスポーツであることをご理解いただいて、ウインドサーフィンの進化の方向性をみんなで議論したいんです。参加者の中には、企業を動かすことのできる人やモノ作りのできる人がいるかもしれない。多くの皆さんにご協力いただいて、日本からイノベーションを起こしたい。その日本発のイノベーションを通じて新しいウインドサーフィンの世界を開拓したいですね。
それともう一つ、将来、私はウインドサーフィンの道具を全て植物由来のものにしたいと思っています。これも日本発のイノベーションとして実現したい。環境省は昨年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。JWAは今、この潮流に乗るべきなんです。SDGsの時代にあって、これからのJWAの役割は、まずはイノベーションが起こりやすい土台を作ること、「イノベーション&SDGs委員会」はそのための大きなきっかけになるはずです。